夜の読書
クーラーがきいた部屋で横になり本を読むのは幸せだが、夜中に窓を開け、虫の音を聞きながらの読書もいい。
やるのなら、八月も半ばを過ぎ、猛暑が落ち着いた頃がいい。
時間は22時以降。できれば日付が変わる頃が望ましい。
窓を開け、網戸越しに夜気を感じる。部屋の電気を消してスタンドの明りをつける。窓の外は道を挟んで空き地で、すずやかな虫の音が聞こえてくる。
あとはゆっくり本を読むだけだ。
はじめる前に、飲み物を用意しておくのを忘れずに。
読むのなら、一夜で読み切れる短編小説がおすすめ。
私がおすすめするのは、恒川光太郎の初期作品。
「南の子供が夜行くところ」
日本から離れた南国の島を舞台にした連作短編集。
読み直すたびに、リンクしあう部分を探し、幻想的な世界を旅している気分になれます。「もう少しこの不思議な世界に浸っていたい」と感じるのも特徴。
物語のあらすじを語ってしまうと、作品が持つ神秘的な部分が失われてしまうので詳しくは書きませんが、夏の夜に読むのにふさわしい物語です。
「遠野物語remix」
遠野物語を現代語にし、再構成した一冊。
原文はかなり読みづらいが、この本は小説を読むのと同じように、すっと遠野物語の世界に入ることができる。
山という異界、座敷わらしや山に住む者といった妖怪の伝承をまとめたものなので、話にオチはなく、その先がどうなったの? と聞きたくなる話が多い。オチがないために、背筋に冷たいものが走るような怖さを感じる話もある。
自分が住む世界とは違う理を感じられるので、異界に浸りたい人におすすめ。ただし得体のしれない怖さがあるので怖がりな人にはおすすめできません。
今週のお題「読書の夏」